大魔王峠

ドリーミア編-終わる悪夢

淡くライトアップされていたドリーミア。まるで夢が覚めていくように、その輝きを静かに落としていった。観覧車が……音もなく横倒しに傾いた。「……みろ」ティアが低く、警戒する声を発する。「何だよ?」とロコが振り向いた、その瞬間。観覧車のフレームが…

ドリーミア編-踊る悪夢

夜のドリーミアは、静かだった。あれほど賑やかだったメリーゴーランドも、観覧車も、もう動いていない。軋む遊具も、歪んだ音楽も聞こえない。ただ、虫の声だけが遠くで響いている。4人の影が、静かに照明の切れた園内を歩いていく。「探査ミッション……夕…

ドリーミア編-回る悪夢

昼食を終えて、廃墟のベンチで一息つく中、レイスがふと立ち上がって言った。「……さっき、お前らが観覧車乗ってる間に気づいたんだけどさ」「ん?」ティアが小首を傾げる。「この遊園地の時計、ぜんぶ7:13で止まってるぜ。観覧車の裏のも、レストランの…

ドリーミア編-同じ悪夢

このところ、決まって同じ夢を見る。最初は遊園地だ。メリーゴーラウンドの音楽が鳴っていて、空は眩しく、風船が空に昇っていく。自分は誰かの手を掴んでいる。だが、その“誰か”が誰なのか、思い出せない。「約束ですよ」赤いスーツに白い髪の人物が、振り…

海編-楽園の終焉

巨大な心臓核を守る触手が、うねる。夢見ぬ侵入者たちを一瞬で絡め取ろうと。ゼリー質の体内から伸びる粘着質な鞭が、空間を貫こうとする。だがその触手は、もう誰にも届かない。マリーナは膝をつき、強化されたフリントロックを両手で構え直す。銃身には、雷…

海編-宝島は、島ではない

朝霧が甲板に薄く立ちこめる頃。すでに海賊たちは誰ひとり寝坊せず。ロープの張り替えや、デッキ磨きに精を出している。ロコは毛に朝露をまといながら、手慣れた様子でマストのロープを巻き直す。すっかり船乗りの一員だ。ふと手を止め、横目でキャプテンを見…

短編集-この世界は奇妙で、おもしろい

スノーベリル-雪の常夏、氷の兄はバテるグラットンバレー。“荒野”の名の通り、昼は溶けるほど暑そうなイメージが先行するが──実際に降り立ってみれば、岩肌を撫でる風は意外と冷たい。陽射しは鋭くとも、乾燥と強風、文明崩壊後の薄まった空気が熱を奪い…

海編-まだ見ぬ蒼海

潮風が鉄と油の匂いを運ぶ、朽ちた高速道路跡の影。ルートナギサの朝は、大小さまざまな小型船が行き交う音から始まる。ペンキの剥げた運搬船、即席で改造された水上バス、どこか南国リゾートを思わせるカラフルな屋根。けれどもここは“楽園”とは程遠い、沈…

冥界-伊弉冉編

崩れかけた鳥居の奥。白銀の社が静かに佇む。雪は音もなく降り続けているのに、風が吹いていない。ただ空気が重い、世界が息を潜めているような静寂だった。社の影が微かに揺れる。雪が落ちるたび、その影は“形”を変える。まるで、そこに“誰か”が潜んでい…

冥界-黄泉平坂編

吹雪のような灰が舞う鳥居前。沈みゆく太陽の残光が、死の門を血のように染めていた。蹄の音が、一歩、また一歩。白い靄の中から、かつて見た“あの影”が現れる。骨の馬が息を吐くたび、空気が凍り、世界が震えた。レイスは一歩前に出る。口元にかすかな笑み…

冥界-境の層編

冥界の中心を貫く「境の層」。この死者の街は、どこか現世の日本を思わせる崩壊と静寂に包まれていた。跨線橋は朽ち果て、ねじ曲がった鉄道が遠くで沈黙し、コンクリートの骸骨とガラスの残響が、灰色の空の下で凍りついている。カリストは、その景色にじっと…

秋葉原編-芸夢大祭

秋葉原。かつてはオタクと電子の聖地と呼ばれた街。けれど今はもう、魔力と金属の腐食臭が入り混じる、終末の電気街だ。ビル群の隙間を縫うように、錆びた配線と光る魔法回路が走っている。ネオンは滲み、電光掲示板は意味を失い、それでもどこかで“起動音”…