大魔王峠

冥界-黄泉平坂編

吹雪のような灰が舞う鳥居前。沈みゆく太陽の残光が、死の門を血のように染めていた。蹄の音が、一歩、また一歩。白い靄の中から、かつて見た“あの影”が現れる。骨の馬が息を吐くたび、空気が凍り、世界が震えた。レイスは一歩前に出る。口元にかすかな笑み…

冥界-境の層編

冥界の中心を貫く「境の層」。この死者の街は、どこか現世の日本を思わせる崩壊と静寂に包まれていた。跨線橋は朽ち果て、ねじ曲がった鉄道が遠くで沈黙し、コンクリートの骸骨とガラスの残響が、灰色の空の下で凍りついている。カリストは、その景色にじっと…

秋葉原編-芸夢大祭

秋葉原。かつてはオタクと電子の聖地と呼ばれた街。けれど今はもう、魔力と金属の腐食臭が入り混じる、終末の電気街だ。ビル群の隙間を縫うように、錆びた配線と光る魔法回路が走っている。ネオンは滲み、電光掲示板は意味を失い、それでもどこかで“起動音”…

原宿-もう“カワイイ”だけじゃ生き残れない

竹下通りの残骸を、黒いパーカーの男が闊歩する。足元には潰れたロリータ傘、ガラクタに埋もれたぬいぐるみたち。「やっぱりKAWAIIは、生きてる証拠だな~」キガは目を細めて、キティを両手でむぎゅっと抱きしめた。そのまま、ほんのり歯を立てる。“カ…

新宿-飯テロ黙示録・後編

空気が一瞬で静止した。呼吸の音さえ消え、音がないことが音のように響く。マカの声がその中心に沈む。魔法陣の中心からレモンイエローの雷光が弾け、空気を焼くように走る。ビルのガラスが反射して、新宿全体が昼のように光った。「——召喚!!」世界が裂け…

冥界-エーリュ―ズニル編

氷の中庭に、再び静けさが降りた。「世界」をテーマにした最終勝負。氷華鏡(ミラージュ・ペタル)と大いなる火(ムスペル・フレア)――それはもはや芸術を超えた、創造と終焉の儀式だった。そして今、冥界史上もっとも恐ろしい時間――採点タイムが始まろう…

冥界-ニヴルヘイム編

門を抜けた瞬間、世界は白銀に染まった。地面は凍てついた大理石。表面に、まるで白薔薇が咲いたような霜が広がっている。空気は薄く、息をすればすぐに白く変わる。中央に、一輪の氷の薔薇。生命の気配などないのに、その花だけはまるで呼吸をしているようだ…

新宿-飯テロ黙示録

ザザッ…ガガッ…闇に沈むビルの一角で、くたびれた古いテレビが唐突に唸り声を上げる。アンテナの先端から青白いスパーク、ブラウン管には無数のノイズが這い回る。画面いっぱいに、ぼやけた「ヒル◯ンデス」風のロゴ。この時代に、そのロゴを見る者がどれほ…

冥界-死京編

世界は一度、火に焼かれて灰となった。だが滅びきれなかった人々は、今年もまた“死者を迎える祭り”を始める。それは、亡き者を忘れぬための祈り。同時に「いずれ自分も、そちらへ還る」という、ささやかな覚悟の儀式だった。-----盆の築地。路地裏まで…

冥界-ネム編

魔界の怠惰界にある格安アパート・シャドウヒル荘。家賃は安いが、天井の配管から定期的にスライムが落ちる。それでもポータルまで徒歩五分という好立地のため、勇者ズの拠点として重宝されていた。その朝、サタヌスは寝癖も直さず出かけた。理由は単純──「…

トウキョウ物語-銀座編

銀座-腐ったメロンを添えて高級ブランドの残骸が風に吹かれて舞う、終末の銀座。崩れたシャネルの看板をくぐり抜け、サタヌスとプルトが並んで歩く。通り沿いの残骸から突き出た看板には、こう書かれていた。「季節限定:プレミアムメロンパフェ ¥32,0…

トウキョウ物語-中野/新大久保/渋谷編

中野-∞番出口終末のトウキョウ。コンクリートは崩れ、ネオンは死に、ビルの骨組みだけが風に鳴く。そんな廃都の交差点に――なぜか、まだ立ってる。忠犬ハント公(Hunter-H)像。犬だ。いや、犬“だった”何か。コバルトの風化塗装、片目には銃弾の…