アンスロポス連合編-死者の王国
食卓に落ちた沈黙が、あまりにも長かった。誰も次の言葉を選べない。選んだ瞬間に、何かが決定的に壊れそうだった。その重さに最初に耐えられなくなったのは、案の定サタヌスだった。「……なぁ、もうやめね? この“全員ちょっと傷ついてます”みたいな空気…
追放勇者・第一幕
アンスロポス連合-冥府の島へ
空間は“静かに”白く染まり、アリスの瞳に初めて「恐怖」の色が浮かぶ。その感覚が、どこかで味わったものに似ていると、ふと脳裏に閃く。……あれは、幼い頃。マスターアサシンに手を引かれ、“深月城”の奥座敷に案内された時のこと。――白い軍服を纏い、…
追放勇者・第一幕
アンスロポス連合-血とファンタズム
デクシアは、薄々わかっていた。――もう後がない。たとえ運良く勇者を倒せたとしても、自分の身体がもたない。邪痕の力は確実に命を削り、内側から蝕んでいる。さらに今は、身体能力を底上げするため、いつもの倍量のハシーシュをキメていた。神経は麻痺し、…
追放勇者・第一幕
アンスロポス連合-教皇庁、突入
世界を引き裂いていた震動が、ゆっくりと収まる。耳鳴りだけが残り、粉塵が、重力に従って落ちていく。ガイウスの視界が、ようやく“現実”に戻った、そのとき。目の前にあったのは、形を失った二つの影だった。ユピテルとカリスト。いや、もう「身体」と呼べ…
追放勇者・第一幕
アンスロポス連合-超重力
重々しい甲冑の足音が、石造りの回廊に響き渡った。シャルロッテが振り返ると、そこには白銀の鎧に身を包んだ数人の騎士たちが並び立っていた。「聖女シャルロッテ・エル・ロスガルス」先頭の騎士が朗々とした声で名を呼ぶ。「女神の盾の禁域に不正に侵入した…
追放勇者・第一幕
アンスロポス連合-運命が動く
カフェの裏通路。黒水晶の通信機が、静かな光を放っている。「……報告を」プルト・スキアの声が、黒水晶から淡々と響く。デクシアとアリスが、その前に膝をつき報告を始める。「……すみません、マスター」アリスが、少しだけ躊躇しながら口を開いた。「四人…
追放勇者・第一幕
アンスロポス連合-祈りを嗤うな
「ガイウス君!」メルクリウスが声を上げた瞬間、ガイウスはテーブルに倒れ込んだ。「おい、しっかりして!」彼の肩を揺さぶる。けれど――反応はない。呼吸は穏やか。まるで“安らかすぎる眠り”。すぐ隣で、サタヌスが笑っていた。「……はは、なんだ……こ…
追放勇者・第一幕
アンスロポス連合-連合の癌
聖都・教皇庁、最奥に位置する謁見の間。白と金を基調とした神聖な空間。高い天井、差し込むステンドグラスの光、足音すら吸い込む深い静寂――勇者たちは、そこに立っていた。ヴィヌスが一歩前に出て、ひざをつく。続いてガイウス、サタヌス、そして最後にメ…
追放勇者・第一幕
アンスロポス連合-ふたつの聖
風呂場から「妾の子~♪」の余韻がまだ残っている中。脱衣所の前で、ニコルはタオルを握りしめたまま、しばらく立ち尽くしていた。「……兄上」呼びかける声は、ふだんの整った敬語より少しだけ震えていた。「何だい、君も風呂の順番を待ってるのかい」メルク…
追放勇者・第一幕
アンスロポス連合編-星の家
「ああ……」シャルロッテはこれまでと違う意味合いで絶望していた。目の前のカレンダーには教皇庁へ戻れという約束の日が書かれている。あれよあれよと乗せられるうちにリプカで1日過ごしてしまった。今からニア・アンスロポスへ戻るにはどんな早馬でも間に…
追放勇者・第一幕
アンスロポス連合編-ニア・アンスロポス
聖都ニア・アンスロポス。白亜の尖塔が朝焼けに染まる頃。ゾルクォーデ邸の執務室では紅茶の香りが漂っていた。重厚な机、経典、金縁の書類。その中央で頬杖をつく男。ヘルメス・フォン・ゾルクォーデ。冷徹な理性の象徴——のはずだが。「ニコル」「はい、父…
追放勇者・第一幕
アンスロポス連合編-聖女暗殺作戦
「レベッカ、話がある」「え……どうしたんですか?2人とも……」宿に戻ったガイウスは早速レベッカに問いただす。彼女は少し動揺した様子で、目を泳がせた。「さっきポーション買ってただろ?」「……はい」「なんでだ?お前、病気じゃないんだろ?」「………
追放勇者・第一幕