追放勇者・第一幕

オーゼ編-白い闇の彼方より

その夜、外は急に静かになった。雪は音もなく降り積もり。風のうなりがひときわ鋭くなったのは、夕餉を終えてすぐのことだった。「……こりゃ、吹雪だな」オルガおばあちゃんが暖炉を見つめながら呟く。窓の外は、もう何も見えない。真っ白。雪が、空も地も時…

オーゼ編-北へ

夜。処刑も終わり、兵たちは誰一人近寄ろうとしない。ユピテルはひとり、崩れかけた指揮室の冷蔵庫の前にいた。「……あったあった。やっぱティータの野郎、勝手に持ち込んでやがったか」冷蔵庫を開けると、中には軍用とは思えない種類の酒が何本か隠されてい…

メキア編-親子

砂嵐を切り裂く音が響く。─魔導戦車隊、先行。その横、同じ速度で砂漠を疾走する3つの影。それは─勇者たちだった。「まさか本当に、戦車に並ぶとは……」黒ベレーが双眼鏡を下ろして呟いた。砲塔の上で、再びあの小隊─色つきベレーの4人が配置につく。「…

メキア編-星の子

ティータは駐屯地の管理室で、訓練報告書に目を通していた。鼻を鳴らしながら、報告書の乱雑な字を読み流す。(使えねぇガキどもが……これじゃあ実戦じゃ死ぬだけだ)そこへ、部下が顔を出した。「軍曹殿、ユピテル様から通信であります!」ティータの表情が…

メキア編-砂の海

ガイウス、ヴィヌス、そしてサタヌス。アルルカンだけで勇者が三人も揃った。しかしー順調なのはここまでだった。ここはソラル大陸で最も過酷で、最も暑き大地-メキア砂漠。今現在勇者3人は、ほぼ遭難というべき状態で砂漠を歩いていた。何故大陸で最も過酷…

クードス編-3章・雷災

ヴァレンが消え、クードスの空に太鼓と鐘の音が響き始める。年に一度の雷の祝祭。広場や水路は祭りの熱気で埋め尽くされ。人々の顔が歓喜に染まる――はずだった。けれど、ガイウスだけはどこか上の空だった。(まるでこの光景自体が、壊されるために始まった…

クードス編・2章-パスタの喰い方わからねぇ同盟

「勇者さんこっちこっち! 踊りまくって腹減ったろ?」ヴァレンが弾む声で手招きする。広場の余韻がまだ耳に残る中、勇者一行は彼に連れられて裏路地へと入っていった。細い石畳の道には夕餉を告げる香ばしい匂いが漂い、窓辺からは笑い声がこぼれてくる。サ…

クードス編・1章-港湾都市へようこそ

陽が高く、雲ひとつない青空だった。クードスの港町を目指す街道の分岐点。砂利道に立ち止まった三人の若者が、使い古した地図を広げている。ガイウスは地図の端を押さえながら、難しい顔で呟く。「……なあ、ヴィヌス。もし砂漠へ向かうなら、どこ通るのが一…

アルルカン編-5章・歓楽都市の光と影

アルルの温かな光を背に、三人は決戦の地――ノワール区へ向けて歩き出した。しかし、その道は華やかな街路でも、整備された大通りでもない。夜の住宅街の端、人気のない裏路地でサタヌスがマンホールの蓋を慣れた手つきで持ち上げる。「アルルから直通でノワ…

アルルカン編-2章・燻る勇者達

オーディスにも掴みきれない第三の勇者、それはアルルカン内にもう一人いた。そしてその人物は今舞台上で声を張っている。「いいわぁ~お姉さんは貴女みたいなブサイクと違って!婚約者候補だっているからねぇ~おっほっほっほ~」主役としてではない。成功を…

アルルカン編-4章・光の洪水

アルルカン、夜の下層――。水煙とスチームが漂う路地裏。パイプの上でサタヌスが腕を組み、不機嫌そうにガイウスを見やった。「上層はスリ行くときしか行かねぇんだが、仕方ねぇ」サタヌスは手早く壁を駆け上がり、屋根の上に飛び乗った。その背中を追いかけ…

アルルカン編-3章・出会いとスラムと

アルルカン下層、ノワール区の夜。屋台が並ぶ通りには、配管の蒸気を再利用して煮炊きする煙が。町の商家やホテル、上層のレストランが「廃棄」するクズ野菜。切れ端のソーセージ、賞味期限ギリギリ(どころか1週間切ってる)肉。スープ鍋の中は「キャベツの…