アンスロポス連合編-聖女来訪
「スクワット50回!腕立て50回!合計3セットオオオ!」黒ベレーたちが汗まみれで訓練に励む演習場。その端にある高台の椅子で、足を組みながら観察しているのはユピテル。その視線は涼しげで、しかし時折、何かを愉しんでいるような艶を帯びる。「ちゃン…
追放勇者・第一幕
アンスロポス連合編-神の国
--深月城静かな玉座の間に、酒瓶の開封音だけが響いた。ユピテルが手にするのはオーゼ土産のウォッカ、極めて度数が強く。無色透明のそれを顔色1つ変えず、頬のひとつ染めず胃に流し込んでいく。「アンスロポス連合、か……」ウォッカを三分の一ほどラッパ…
追放勇者・第一幕
オーゼ編-愛の温度
「ナージャー! どこだー!」サタヌスは声を張り上げながら、針葉樹の合間を駆けていた。雪を蹴り、枝を払いながら進む道は、もう人の気配が消えて久しい。彼の息は白く、コートの隙間から冷気が容赦なく入り込む。「……ったく、なんで子ども一人でこんなと…
追放勇者・第一幕
オーゼ編-白い闇の彼方より
その夜、外は急に静かになった。雪は音もなく降り積もり。風のうなりがひときわ鋭くなったのは、夕餉を終えてすぐのことだった。「……こりゃ、吹雪だな」オルガおばあちゃんが暖炉を見つめながら呟く。窓の外は、もう何も見えない。真っ白。雪が、空も地も時…
追放勇者・第一幕
オーゼ編-北へ
夜。処刑も終わり、兵たちは誰一人近寄ろうとしない。ユピテルはひとり、崩れかけた指揮室の冷蔵庫の前にいた。「……あったあった。やっぱティータの野郎、勝手に持ち込んでやがったか」冷蔵庫を開けると、中には軍用とは思えない種類の酒が何本か隠されてい…
追放勇者・第一幕
メキア編-親子
砂嵐を切り裂く音が響く。─魔導戦車隊、先行。その横、同じ速度で砂漠を疾走する3つの影。それは─勇者たちだった。「まさか本当に、戦車に並ぶとは……」黒ベレーが双眼鏡を下ろして呟いた。砲塔の上で、再びあの小隊─色つきベレーの4人が配置につく。「…
追放勇者・第一幕
メキア編-星の子
ティータは駐屯地の管理室で、訓練報告書に目を通していた。鼻を鳴らしながら、報告書の乱雑な字を読み流す。(使えねぇガキどもが……これじゃあ実戦じゃ死ぬだけだ)そこへ、部下が顔を出した。「軍曹殿、ユピテル様から通信であります!」ティータの表情が…
追放勇者・第一幕
メキア編-砂の海
ガイウス、ヴィヌス、そしてサタヌス。アルルカンだけで勇者が三人も揃った。しかしー順調なのはここまでだった。ここはソラル大陸で最も過酷で、最も暑き大地-メキア砂漠。今現在勇者3人は、ほぼ遭難というべき状態で砂漠を歩いていた。何故大陸で最も過酷…
追放勇者・第一幕
クードス編-3章・雷災
ヴァレンが消え、クードスの空に太鼓と鐘の音が響き始める。年に一度の雷の祝祭。広場や水路は祭りの熱気で埋め尽くされ。人々の顔が歓喜に染まる――はずだった。けれど、ガイウスだけはどこか上の空だった。(まるでこの光景自体が、壊されるために始まった…
追放勇者・第一幕
クードス編・2章-パスタの喰い方わからねぇ同盟
「勇者さんこっちこっち! 踊りまくって腹減ったろ?」ヴァレンが弾む声で手招きする。広場の余韻がまだ耳に残る中、勇者一行は彼に連れられて裏路地へと入っていった。細い石畳の道には夕餉を告げる香ばしい匂いが漂い、窓辺からは笑い声がこぼれてくる。サ…
追放勇者・第一幕
クードス編・1章-港湾都市へようこそ
陽が高く、雲ひとつない青空だった。クードスの港町を目指す街道の分岐点。砂利道に立ち止まった三人の若者が、使い古した地図を広げている。ガイウスは地図の端を押さえながら、難しい顔で呟く。「……なあ、ヴィヌス。もし砂漠へ向かうなら、どこ通るのが一…
追放勇者・第一幕
アルルカン編-5章・歓楽都市の光と影
アルルの温かな光を背に、三人は決戦の地――ノワール区へ向けて歩き出した。しかし、その道は華やかな街路でも、整備された大通りでもない。夜の住宅街の端、人気のない裏路地でサタヌスがマンホールの蓋を慣れた手つきで持ち上げる。「アルルから直通でノワ…
追放勇者・第一幕