追放勇者・第二幕

タタリ編-魔王の繭

食堂を出ると、リウド村は少しだけ活気が戻っていた。軒先で、村の主婦が「今頃大龍祭かしらねえ」とつぶやきつつ、大根を細く切って干している。傍らでは子供たちが、柳の葉っぱと小枝で舟を作り、川べりで夢中になって遊んでいる。「見てー!この葉っぱ舟、…

タタリ編-輪廻の街

ガイウスが国外追放され、新たな仲間とともに。ルナ再臨に奔走する魔王軍残党と熾烈な戦いを繰り広げている頃…… 。アルルカンのスラムからも姿を消し、消息不明となったサタヌスは。「初めての一人旅」に出ていた。顔を合わせれば喧嘩していた仲間たちもい…

丙編-もうひとつの雷神

凍てつく空気。外では雪が音もなく降り積もり、分厚い硝子窓が曇っていた。軍司令部の一角──整然と並んだ書類の山の中で、日向大和大尉は手袋を静かに外していた。緊張が肌に滲む。ほんの少しの逡巡の後、彼は口を開く。「晴輝様。……お時間がありますか?…

丙編-神楽城

夜霧の中、静かな水面に舟が一艘浮かんでいた。木造の小舟。灯りはなく、ただ灰色の水を押し分けるようにゆっくりと揺れている。その舳先に、古びた笠をかぶった男がいた。目は見えず、顔も半ば影に沈んでいる。低い声が霧を裂いた。「……神楽に渡るのか」「…

丙編-亡者の國

ソラル随一の秘境――「ソルーナ」。月光だけが地を照らす聖域に、聖剣《エクスカリバー》は封じられていた。千年の封印を経て再びその輝きを取り戻した刃は、かつての勇者を呼び覚ます。名実ともに「勇者」として再誕した青年、ガイウス・アルドレッド。その…

大龍編-聖剣の試練

雪の夜明け。帝都デリン・ガルは、まだ眠ったままだった。街を覆う灰色の空の下、教会の尖塔が霧に溶け、ただひとつ、中央区の旧議事堂だけが灯りを放っていた。そこは、今や魔王軍の臨時司令拠点。聖堂のステンドグラス越しに見えるのは、血のように赤い空。…

大龍編-遥かなる故郷

馬車の車輪が、湿った石畳を軋ませながら進んでいく。森を抜けた瞬間、霧の向こうにその町は現れた。まるで世界の端にぽつりと取り残されたような、静かな町。赤い屋根、古びた木骨造りの家々。その窓には小さなランプが灯り、橙の光が霧の中でぼんやりと滲ん…

大龍編-眠らぬ街

―診療所・再会その夜、もう一つの目的を果たすために、ガイウスは足を運んでいた。ノワール区の奥、古いレンガ造りの診療所。かつて“ルナ”によって魔族に変えられた名もなき女性――。自分とサタヌスを“撒くため”犠牲にされた彼女がどうなったのかを、確…

大龍編-その名は虹瞳

「負けたじゃないの!!ハオどうするのよ!」「う~ん困ったネェ、この作戦。ガイウスに勝って貰わないと成立しないのヨネ」「んなのんきな事言ってる場合かぁ!キズ野郎!立て!!立ちなさいよぉおお!!」「そうだぜ!立ってくれぇええええ!!」「ガイウス…

大龍編-武神と海王

フーロン首都-パーダオレオノーレが温度差で風邪を引きそうだと言う通り。王女を喪い国全体が悲しみに包まれるアルキード王国に対し。フーロン皇国中が湧いていた。なぜなら今日は大龍祭。国を挙げて祝う日なのだ。街ゆく人々の顔は明るく、誰もが笑顔だった…

アルキード編-GRAVITY FREE

「あれぇ…?俺は、さっきまで…んん?」気付けば霧の中、さっきまでウラヌスと戦っていた筈だが?やがて霧の中にぼんやりと見覚えある景色が見えてきた。そこはいつもの村だった。石畳の道。白い煙の立つ煙突。家の前にはマントが干されている。――ディノス…

アルキード編-聖夜に向けて

3人でやったおかげで、昼下がりに終わると予想していたリース作りは午前中で終わった。そしてアネットの話を思い出す。リアナ姫が黒い魔族と話していた、というものだ。しかもその黒い魔族とリアナ姫は定期的に「おしゃべり」しているらしい。「黒い……魔族…