燃えるレーヴァティンが、ぱちぱちと穏やかな音を立てていた。
だが、その暖炉の前で交わされる会話は、全く穏やかではない。
レイスが煙草をくわえたまま、眉をひそめてロキを見やる。
「境の層に降りる前にさ……ずっと気になってたことがあってよ」
「“そもそも何でお前、世界樹焼いたの?”って話。」
ロキは一瞬、きょとんとした顔で首を傾げる。
だが、すぐにいつもの無邪気な笑みを浮かべた。
「お、懐かしい話出たねぇ♪」
レイスは続ける。
「師匠が教えてくれたんだけどさァ。
世界樹が燃えて、エデン再興計画とか全部パァになったって聞いたんだけど」
ロキはワインをくるくると回しながら、軽く頷いた。
「うん♪ そうだよ」
「ミレニアム計画も止まっちゃったし、神族への人間の信仰がブレブレになったのもアレからだね」
ハオが、呆れたように笑いながら尋ねる。
「それ……狙ってやったノ?」
ロキはグラスを口に運び、あっさりと言い放つ。
「いや、世界樹って……派手に燃えそうだったジャン。」
一瞬、沈黙。
その場の全員が、揃って彼を見つめた。
――理解不能。
天界が一度滅んだ理由、それがまさかの「ノリ」。
プルトはこめかみに手を当て、深く息を吐く。
レイスは呆れを通り越して笑い出し、フェンリルは頭を抱える。
ハオだけが、クッキーをかじりながら小さく頷いた。
「……わかる。派手に燃えるモノ、燃やしたくなる気持ちネ」
ロキは得意げに指を立てる。
「でしょ? でもさー、結果的に面白いこといっぱい起きたし! “歴史が動いた”ってやつ!」
レイスは額を押さえて天井を見上げる。
「いや、動いたのは“お前のせいで焦げた歴史”だろ……」
冥界に、乾いた笑い声が響いた。
誰もが思った――この神だけは、永遠に理解できない。
だが、同時に誰もが知っていた。理解できない神ほど、世界を動かす。
レーヴァティンの炎が、ひときわ明るく揺らめいた。
まるで、「そうそう、それでいいんだよ」と言わんばかりに。