終末どうぶつアフターライフ - 2/4

—絶滅種—

パンダ-かわいい、の果て

世界がまだ「日常」の名残を残していた時代。
ガラス越しに人々の歓声を集めるアイドルだった。
けれど“大災害”で全ては価値の彼方に吹き飛んだ。

放射能に染まった笹しか生えない、その地獄のような地で、彼らは減っていった。
「箱入り」動物は、生きるすべもなく弱っていき。
最後は“人道的”という言葉でまとめられ、楽にされ。
静かに退場を命じられた。

上野動物園、その檻には誰もいない。
かつての「人気者」の檻の前で、誰かが手を合わせる。
けれど、その人もきっと“本当に愛していた”のかどうか、もう思い出せない。

「条約に守られた命は、尊くも脆い」
ワシントン条約無効化後の絶滅種

サイやゾウなどの「動物園定番のぶれ」は
ワシントン条約という「人間同士の約束」によって守られていた生物
尊くも脆い相互理解が失われた瞬間。彼らは消えた。

サイ
角=通貨・薬・権力の象徴
→ 最優先で狩り尽くされる

ゾウ
牙・肉・皮・労働力、全部が資源
→ 群れ単位で消滅

トラ・ライオン
強い=脅威=先に殺される
→ 乱獲+生息地消失で詰み

ゴリラ・オランウータン
知能が高いが繁殖が遅すぎる
→ 守る人間が消えた時点で終了

ウミガメ・ゾウガメ
成長が遅い、卵が狙われ放題
→ 食糧危機下で未来がない

自然界では強者だったが、人間社会では“守られていた存在”だった。

蚕・シルクはみんな好きだけど、本物はもう誰も知らないんだ。

蚕(カイコ)は、元々“完全なる家畜化”を果たした虫。
自然界に自力で戻れず、ただ人のためだけに生きた…
そのため“大災害”でまず真っ先に絶滅したのが、彼ら。

けれど「シルク生地」だけは奇跡的に残った。
それもほぼ全部が“魔界製・模造品”。
手触りや艶を再現したフェイクシルクが、今も高級魔界ブランドや式服。
一部のコレクターのコート、魔王軍の正装などで使われている。

誰も本物のシルクを知らないけど。
「儚くて、きっと触れたら消えそうな糸」っていう伝説だけは。
今も魔族たちの間に語り継がれてる。

コアラ – かわいいは燃え尽きる

コアラは“かわいさ”の象徴だった。
だが、彼らの運命は食嗜好に縛られていた――
「ユーカリの葉しか食べられない」という生態は。
環境の変化に対してあまりにも脆弱だった。

世紀末、シドニーで炸裂した核の炎。
熱風は一帯の森を焼き払い。
風に乗った放射能と高温の灰がユーカリを根こそぎ消し去った。
「かわいい」は、生き残る理由にならなかった。

チーター-最速の獣。しかし、絶滅からは逃げ切れなかった。

複数の理由があるが、最大の要因は「生息地の分断」。
空爆と戦争によりサバンナは無数の“立ち入り禁止区域”になり、鉄条網が張り巡らされた。
けれど、そこは動物園の檻とは違う。
いくら待っても肉が投げ込まれることはない。

餌不足による“餓死”――
チーターは、最も静かに滅びていった。
最速の獣は、絶滅から逃げ切れなかった。

アザラシ ― 海はデブリが増えすぎた

元来アザラシは、漁網やロープに絡まり命を落とすことが多い生き物だった。
それでもそれは「事故」の範囲であり、個体数を揺るがすほどではなかった。
だが、大災害は海の性質そのものを変えた。

流れ込む建材、金属片、ケーブル、割れたガラス、破損したコンテナ。
漁具よりも遥かに危険な“人間の残骸”が海を満たした。
アザラシたちは切断され、絡まり、裂かれ、内臓を抉られた。

水族館で“アイドル”と呼ばれた個体群も例外ではない。
海は広すぎた。
だが、人間のゴミはそれ以上に多すぎた。

センザンコウ – 信じる者は救われない

古来から「センザンコウの鱗には不思議な薬効がある」
との迷信が根強く信じられていた。
だが、大災害による医療崩壊と未知の疫病の蔓延が引き金となり。
サイやゾウとほぼ同じスピードで。
世界中の人々がセンザンコウを求めて狩り始めた。

最後の希望を“迷信”に託し、鱗にすがるほかなかった。
センザンコウの鱗には一切薬効がない。
魔界薬泉院がそう断言した時には、既に手遅れだった。
最後の一頭となったセンザンコウは。
薬泉院の庇護下で穏やかな余生を過ごし、消えた。
もう誰も、救われなかった。